Ko Kazaana
ml****@windh*****
2003年 11月 16日 (日) 17:04:05 JST
こんにちは。風穴(かざあな)と申します。 話の本筋としては解決しているようなので、余計なことかもしれないのですが、 ちょっと気になったのでコメントしてみます。 # このMLのメールをチェックしたのが最近なので、ちょっと時機を逸してしまっ # ているかも。すみません。 = On Fri, Oct 24, 2003 at 08:02:48AM +0900, = Yukihiro Matsumoto-san wrote: > |> そのはずです。私も伝聞で詳しいわけではないのですが。 > |> GPLコンパチブルなライセンスであれば、GPLライブラリをリンクす > |> るのに問題はありません。ただし、実際にリンクした後のバイナリ > |> はGPL的派生物と見なされます。 > | > |すると、バイナリrpmそのものはBSDで構わないけれど、それを > |起動してダイナミックリンクされた瞬間GPL派生物に化けてしまう… > |のかしらん。 > > バイナリrpmはGPLプログラム(gdbm)とリンクされるべくコンパイル > されているので、GPL派生物とみなされると思います。一方、ソー > スの方は、たとえばBSDライセンスのgdbm互換ライブラリとリンク > する場合もありえますから派生物とはみなされません。 このような議論はよく見かけるのですが、「リンク」する、しないとか、「派 生物」(この場合は不適切な用法だと思います。理由は後述)という言い方にと らわれてしまうから、分かりにくくなってしまうのではないかと思います。 そうではなくて、「(自分以外の人が権利を有する)著作物を含むかどうか」、 「著作権者による許諾が必要なことを行うかどうか」という点で考えれば、分か りやすいのではないでしょうか。 つまり、ライセンスについて考える場合は、基本的に、 (1) 当該配布物に、自分以外の人が権利を有している著作物が含まれている (文字通り、物理的に含まれる)かどうか (2) 含まれていた場合、それについて「著作権者による許諾が必要なこと」 (プログラムの場合は、主に複製権、公衆送信権に含まれる行為)を行 うかどうか という2点を考えれば良いわけです。 なので、「ダイナミックリンクされた瞬間GPL派生物に化けてしまう」とか、 「リンクされるべくコンパイルされているので、GPL派生物とみなされる」とい うことは、実はありません(というか、不正確な言い方だと思います)。 問題になるのは、あくまでも、他人の権利が及ぶものを「物理的に含んでいる」 ものについて、「著作権者による許諾が必要な行為を行う」場合です。 「リンクする」だけとか、「コンパイルする」だけでは、通常はそれによって 著作権者による許諾が必要になることはありません。許諾が必要になるのは、複 製や公衆送信など、著作権法によって、著作権者に認められた権利に抵触する行 為を行う場合です。 # 実行時に、プログラムコードがメインメモリにロードされることを複製とみな # すかどうかは、国などによって異なるようです。日本では通常、それは著作権 # 法でいうところの複製とは考えないのが主流のようです。 あと「GPL派生物」(GPL条項の中にある「derivative work」)という言い方 も、この場合(というか、リンク云々が議論される局面で用いられる場合のほと んど)は、正確な表現ではないと思います。 ここで「派生物」といっているのは「derivative work」のことだと思います が、著作権法でいう「derivative work」というのは、翻訳とか編曲とか、原著 作物を「翻案」して作成されるもののことをいいます。著作権法の訳語としては 本当は「二次的著作物」とするべきです。 日本語で「派生物」とすると、何となく「関連するものすべて」と受け止める 人が多いようで、それによって「GPLは何にでも『感染』してしまう」というよ うな誤解が生まれ、「GPLは怖い」と感じてしまう風潮に繋がってしまっている のではないかと思います。 一方、コンピュータプログラムの文脈でリンク云々と言う場合は、特に元のラ イブラリを変更したりはしないので、翻案というよりは、ライブラリのコードを 「含むか含まないか」という問題です。なので、「リンクしたらGPL派生物」と いう言い方は不正確だし、混乱の元になります。 お役に立てれば幸いです。 -- Ko Kazaana / Editor-in-Chief, Columnist TechStyle "Open Source Business Review" ( http://techstyle.jp/ ) GnuPG Fingerprint = 1A50 B204 46BD EE22 2E8C 903F F2EB CEA7 4BCF 808F