長南です。 このマニュアルは、全体としてかなりよい訳だと思います。 手を入れたいところは、"getopt" と同じスタイルで翻訳原稿に直接書き込みました。 書き込みがたくさんあるように見えますが、"Counters" を抜かせば、余分な空白を 取るために二行を一行にしたり、タイポを直したり、意味をはっきりさせるために 助詞や「、」を補っただけのところもあるので、見かけほどではありません。 "Counters" サブセクションの "The amount of data ..." 以下は、 何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。Web で hexdump の解説を いくつか読んだり、フォーマット文字列を何度か自分で書いて試してみたところ、 一箇所を抜かして、ほとんど正しい訳をしているのが分かりましたが、それでも、 非常に意味の取りにくい訳文であることに変わりはありません。もっとも、 原文の欠陥だと、つまり、説明が足りない、語るべきことと省略すべきことの 選択を間違えている、実例を上げて説明しなければ、こういうことは分かるわけがない、 ということは言えると思います。そんなわけで、この部分は、訳注を入れて、 訳し直してみました。まだまだ読者に理解してもらえないかもしれません。 もっと分かりやすい案があれば、うかがいたいと思います。 例によって、訳語、訳文についていくつか。 ○ OPTIONS: Below, the length and offset arguments may be followed by the multiplicative suffixes KiB (=1024), MiB (=1024*1024), and so on for GiB, TiB, PiB, EiB, ZiB and YiB (the "iB" is optional, e.g. "K" has the same meaning as "KiB"), or the suffixes KB (=1000), MB (=1000*1000), and so on for GB, TB, PB, EB, ZB and YB. 拡張子と倍数については、前にも言ったと思います。「接尾辞」「乗数」 の方がよいでしょう。 "and so on for GiB, Tib ..." の "and so on" は、普通「等々」と 訳しますが、ここの "so on" は "(=1024*1024) などを指していると 考えるべきではないでしょうか。「Gib, Tib ... についても等々である」と。 こういう使い方がよくあるかどうかは知りませんけれど。 ここでまとめて言ってしまいますが、'the "iB" is optional' とか、 'The optional argument "when" can be auto, never or always." のような「あってもなくてもよい、省略可」の意味で使っている 'optional' の訳では、「オプションである、オプションの」などと「オプショション」という 言葉を使うのは、避けた方がよいと思います。'-b', '-d' のような本来の オプションもあり、オプション引数もあるので、紛らわしいと思います。 それでは、どう訳すか、というとかなり面倒なのですが。 ○ -b, -c などの "zero-filled"、"space-filled" の「字詰め」という訳: 「0 で字詰めした、空白で字詰めした」と訳してありますが、そういう言い方は 普通にあるのでしょうか。「四百字詰め原稿用紙」という言い方は普通にします。 また、「(先頭を) 0 で埋めた」といった表現もよく見かけます。もっとも、 「字詰め」で何を言っているか十分わかると思うので、そのままにしておきました。 ○ -L について、および COLORS (カラー表示) セクションについて: "--color=always" はわかります。"--color=auto" というのは、 どういう意味なのでしょうか。手元の debian 9 (最新は 10) に util-linux 2.34 の hexdump を入れたところ、"hexdump --help" の結果に "colors are enabled by default" が現れました。 これは、"-L" オプションのデフォルトの auto でカラー表示をする ということではないでしょうか。なお、/etc/terminal-colors.d/ には hexdump.enable も hexdump.disable もありません。この状態で カラー表示をするフォーマットファイル color.fmt を作り、以下を実行します。 $ hexdump -L -f color.fmt sample.txt カラー表示になりません。"-Lauto" でも ("--color=auto" でも) カラー表示に なりません。"-Lalways" ならカラー表示になります。/etc/terminal-colors.d/ hexdump.enable を作ってみても同じことです。 なお、COLORS セクションに従って、/etc/terminal-colors.d/hexdump.disable を作ってみても、"-Lalways" でカラー表示が行われます (これは、そういうもの なのでしょうけれど)。 どうなっているのでしょう? debian ではうまく行かないのか、うちの debian が 古いせいか、それとも私が util-linux のビルドに微妙に失敗しているのか。 あるいは、使用している端末のせいなのか (主として xfce4-terminal ですが、 Ctrl-Alt-F1 などの仮想コンソールでも結果は同じです)。 ○ whitespase: 訳語を「空白」のままにしておきました。「空白 (またはタブ)」にしたところも 一箇所あります。ほかのメールでは、"whitespace" は普通の "spase" と 区別して、「ホワイトスペース」と訳したほうがよいと書きましたが、hexdump では、空白やタブと改行では働きが違うので、「ホワイトスペース」と訳すと、 不正確になってしまうからです。こういう、改行を含めない「ホワイトスペース」の 使い方もあるのですね。 ○ Conversion strings サブセクションの "_u": "Output US ASCII characters, with the exception that control characters are displayed using the following, lower-case, names. Characters greater than 0xff, hexadecimal, are displayed as hexadecimal strings. character の表示なんですから、"greater than 0xff" は、"greater than 0x7f" のタイポだと思います。すぐ下の表の「0FF」も、"del" なら 「07F」でしょう。 ○ Colors サブセクション: "Negate the condition. Please note that it only makes sense to negate a unit if both a value/string and an offset are specified. In that case the respective output string will be highlighted if and only if the value/string does not match the one at the offset." こうした "value/string" の "string" が何のことか、イマイチわかりません。 "/" は、"or" であり、"0x61" といった値の代わりに、"abc" といった文字列 が指定できるということでしょうか。それとも、"lf (Line Feed)" とか "ht" とかが使えるのでしょうか。いろいろ試してみたのですが、"lf" などは 使えないようです。"abc" のようなものなら、確かに、"%s" を使い、フィールド精度を 文字数に合わせれば、文字列のカラー表示ができないこともありませんが、カラーに ならないところもあって、「文字列が指定できます」と威張って言えるようなものでは ありませんでした。なお、一文字なら、"%c, %_p, %_u" などでもできます。 オフセットの指定の仕方によっては、エラーが出ますけれど。 もしかすると、"string" は「文字列」ではなく、ただの「列、連続」でしょうか。 "bit string" なんて言葉もあるそうですし、16 進数や 8 進数の「列、行列」。 たとえば、4 バイトづつ 16 進数に変換したときの "2c796548" といったもの。 でも、そう考えると、"VALUE" の項の "... specified in hexadecimal, or octal base, or as astring" がわからなくなります。"2c796548" は "in hexadecimal base" ではないのか。 そんなわけですので、取りあえず「文字列」のままにしておきました。 それから、"Please note that it only makes sense ..." 以下も、 なぜ、値とオフセットの両方を指定しないと意味がないのか、よくわかりません。 条件を否定する。 注意していただきたいが、あるカラー指定単位につ いて否定することに意味があるのは、 値/文字列と、オフセットの両方 を指定したときだけである。 その場合は、値/文字列がそのオフセット にあるものとマッチしなかったときにのみ、 対応する出力文字列がハ イライトされることになる。 [訳注] 上で言っているのは、否定は、あるオフセットまたは比較的 狭いオフセットの範囲に、 ある値が存在しないことを調べるた めのものだということだろう。 広範囲についてそれをやるの は、色彩を反転させるだけで、否定しないときと事実上同じこ とになる。 一応、上のように解しましたが、そういうことでしょうか。他の解釈があったら、 教えていただきたいと思います。 ○ Counters サブセクション: この "Counters" をどう訳したらよいのか。Counter というのは、「数を数える人、 数を数える道具、計算をする場所(いわゆるカウンター)」のことでしょう。この場合、 どう取ったらよいのか。一応、すぐ後に続く文章から、「処理されるバイト数」と しておきましたが、もっとピッタリな表現があるかもしれません。 ○ EXIT STATUS セクション: このマニュアルでは "return value (code)" を使ったところがありませんから、 原文どおり「終了ステータス」と訳した方がよいと思います。 ○ 翻訳者謝辞: FreeBSD jpman project に謝意を表されていますが、翻訳履歴を見ると、 NetBSD jman project からいただいたもののようです。どっちなのでしょう。 NetBSD のものを元にして手を入れたが、FreeBSD の翻訳も参考した、 ということでしょうか。その場合でも、謝辞で FreeBSD に謝意を表するなら、 NetBSD にもお礼を言ったほうがよいのではないかと思います。 手を入れた原稿は、hexdump.new.gz として添付します。 -- 長南洋一 -------------- next part -------------- テキスト形式以外の添付ファイルを保管しました... ファイル名: hexdump.new.gz 型: application/octet-stream サイズ: 11885 バイト 説明: 無し URL: <https://lists.osdn.me/mailman/archives/linuxjm-discuss/attachments/20191205/8bf92387/attachment.obj>